臨時休校中、いかがお過ごしですか。子どもたちの様子は家庭訪問で確認しています。
保護者の方も今までと違う日常で、身体的にも精神的にも大変だろうと推察します。
本校のスクールカウンセラーだよりをご覧いただき、参考にしてください。
「スクールカウンセラーだより特別号」 吉良中学校 スクールカウンセラー 佐々 汐里
頑張っているみなさまへ
―新型コロナウイルスと日常生活―
新型コロナウイルス(COVIT-19)により、見通しの立たない状態が続いています。社会的に緊迫した雰囲気を常に感じ、また経済面、健康面の心配をお抱えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
特に、お仕事の制限等により自宅で過ごす時間が長くなった方も、多数みえると思います。親子関係が密となるよい機会の一方、通常の生活との違いに戸惑いを感じ、限られた生活空間でのストレス、またニュース等から伝わるさまざまな情報により、不安や恐怖、心配を強く感じている方もみえるでしょう。お子さまの中には、日常の変化により知らず知らずのうちにストレスや不安を抱え、ときには言葉が乱暴になったり、兄弟げんかが増えたりと、ふだんとは違った姿を見せることもあります。そういったお子さまの姿に対し、日々向かい合っている保護者の方々自身もストレスが募り、感情的に子どもにあたってしまうことや、一緒に過ごすことが苦しくなることがあるかもしれません。こういった状況の中、今お子さまに何が起こっているのか、どういったことに注意が必要であるか、セルフケアとして何ができるか、役立つことをお伝えできればと思います。ご一読くださいませ。
◎大人も子どもも関係なく、今何が起こっているのか
・非日常状態の継続 今までのあたりまえがなくなります。非日常を過ごすことになります。
〇情報過多
・新型コロナウイルスに関する新しい情報が常に入ってきます
〇環境の変化
・休校の延長
・外出自粛
◎ストレス反応として起こりやすいこと
非日常を過ごすことにより、「いつもと違う状況」に慣れるため、身体も心もふだんよりエネルギーを使います。ふだんより疲れます。すると、自分を守るために身体や心がSOS を出し始めます。日常では起こらないことが起こるようになりますが、これは非日常に対する正常な反応 です。日常では異常と思われることが、非日常では異常ではなく自分を守るための正常な反応として起こります。自分だけに起こることではありません。
〇身体の症状
・頭が痛い
・お腹が痛い
・眠れない
〇行動面の変化
・いらいらする
・いつもより喋る
・食欲の変化
〇子どもに起こりやすい変化
・言動が幼くなる
・わがままになる
・「ウイルス」という言葉を用いた遊びをする
◎保護者の方からお子さまへ
①安心と安全の保証
〇日常生活の維持 〇一緒に考える
・いつもと同じ時間に就寝、起床をする ・家で過ごす中での約束
・規則正しく食事をとる ・外に出るときの約束
・学習を行う時間を作る ・感染予防のための約束(手洗い、マスク等)
②子どもの気持ちを聞く
〇聞き方のヒント
・どんな気持ちでも伝えていいことを伝える
・お絵描きをしながら、お風呂に入りながら、作業しながら
・どんな気持ちでも否定しない
「そう思うんだね」「よく話せたね」等
・子どもなりの頑張りを認め、褒める
「頑張っているね」「苦しかったね、大丈夫だよ」等
③一緒に予定を立てる
〇アクティビティの取り入れ 〇予定を立てるヒント
・ラジオ体操やストレッチ ・子どもに無理をさせないお手伝いを話し合う
YouTube などにもたくさんあがっています。 ・思春期の子どもには、
お子さまと一緒に探すのもおすすめです。 プライベートな時間、空間を保証する
・レジン、粘土、ゲーム ・指示ではなく一緒に考える
一緒にやってみると自然な会話が生まれやすいです。 ・完璧にできなくても責めない
・呼吸法や筋弛緩方法等のリラクゼーション 「ありがとう」「助かるよ」等
後ほどご紹介します。
◎子どもの抱える不安のヒント
〇ウイルスへの不安と恐怖
情報がありふれていることにより、常に「コロナウイルス」という見えない恐怖にさらされています。特に子どもはテレビやネットなど、過度で過激な情報の影響を受けやすいため、緊張感を抱えやすいです。また、同じような情報を繰り返し受けることにより情緒が不安定になることも分かっています。ときには情報を遮断しましょう。繰り返し安心を与えるような言葉かけをすることや、正しい情報を伝えることが安定につながります。
〇大切な人とのコミュニケーションの維持
スマホやゲームばかりしてしまう姿を見ると、大人からすると不安なものです。しかし、休校や外出自粛によりいつもは会える友達と会えないことで寂しさを強く抱えている子どもが多くいます。そんな中、LINE やSNS、ゲームはお家の中でできる友達とつながるツールとなります。使用の際の注意点やルールは決めておく必要がありますが、制限を緩めてコミュニケーションの機会を作ることも、子どものストレス対処法となり得ます。
◎保護者の方々のセルフケア
大人にとっても非日常は疲れるものです。勤務形態の変化、経済面の変化、子どもとの時間の増加、家事の増加等、疲れを感じることが増えているのではないでしょうか。非日常に対し、ただでさえご自身の身体と心は疲れています。そのうえ、お子さまの不安や変化を受け止めなくてはいけません。お子さまに強く当たってしまう、それは保護者の方々自身のストレスのサインであるかもしれません。そのようなときは、ご自身を責めるのではなく、ご自身を癒すような行動をしてみてください。
〇自分の状態をイメージしてみる
温度計をイメージしてください
5 度 切れる 誰かを頼りましょう。
4 度 切れそう 危険でないことを確認し、部屋を離れましょう。
3 度 強いいらだ 子どもと距離を取りましょう。
2 度 いらだち リラクゼーションを使いましょう。後ほど紹介します。
1 度 少しいらだつ ゆっくり深呼吸してみましょう。苛立ちを自覚します。
自分を責める必要はありません。工夫していても、子どもが言うことを聞かなかったり、強く当たられてしまうとどんな親御さんであってもいらだちを抑えられなくなることはよくあることです。自分自身を責めないでください。温度計のイメージで、3や4 の段階であると感じたら別の部屋に行く等、お子さまと距離を取りましょう。気持ちが落ち着いてから、お子さまのもとへ戻りましょう。そのときには、「お母さん(お父さん)がさっき出ていったのはお母さん(お父さん)の気持ちを落ち着かせるためで、あなたのことが嫌いになったのではないよ。心配しないでね」と伝えてみてください。
〇セルフケア
・自分時間を作る
音楽/日記/スイーツ/ストレッチ/ヨガ/お風呂/歌 等、ご自身に合った方法を見つけておく
自分のために時間を使うことも必要です。1 日10 分でもよいので、自分時間を作ってみましょう。
・自分の気持ちを表現する
楽しい/辛い/寂しい/嬉しい/イライラする 等、伝えられる人に表現してみてください。
自分の気持ちを大切にすることが、自分たちを守ることにつながります。
・他者とのつながりを維持する
ママ友/友達/趣味の仲間/学校の先生 等、お子さまと自分だけに集中してしまうときは広げてみましょう。
LINE やメール、電話、SNS 等、活用してみてください。なんとなく安心が得られるかもしれません。
〇呼吸法や筋弛緩法:身体をリラックスさせる方法です。気持ちも一緒に落ち着いていきます。
・呼吸法
鼻からゆっくりと、お腹が膨らむのを意識して息を吸います。2 秒程息を止め口からゆっくり息を吐きます。
お腹がへこんでいくのを意識して、熱い飲み物を冷ますように吐いてみてください。5~10 分ほど繰り返します。
・筋弛緩法
筋肉に力を入れ、一気に力を抜くことで身体をリラックス状態へとする方法です。楽な姿勢で、肩に力を入れ、すとんと力を抜いてみてください。じわっと温かさが広がるような感覚を味わいます。腕、足、と少しずつ全身へと広げていきます。寝る前に行い、そのまま眠ってしまうのもおすすめです。
◎最後に
〇頑張りすぎのサイン
・どんなに頑張っても気持ちが落ち込んでやる気がでない
・いつも集中できず、気が散ってイライラする
・人や自分を傷つけてしまったり、物を壊したりしてしまう
・泣けてきてしまう
〇サインに気がついたら
それはあなたが一生懸命頑張ってきた何よりの証です。ご自身が気が付かないうちに、疲れが溜まりすぎてしまったのではないでしょうか。自分を責めたり、一人で抱え込んだりせず、早めに相談しましょう。頼れる友人に話してみるところからでもよいです。児童相談所や、支援センターなど、利用できるところに電話してみましょう。休息が必要です。
ここまで読んでいかがでしたか。「もうやっている」という方もいらっしゃるかもしれません。「こんなにやらなければならない!?」と驚かれた方もいらっしゃるかもしれません。大丈夫です。できるところから、できそうなところから、まずは自分を癒すところから、始めてみませんか。
日々、がんばって過ごしていらっしゃるみなさまのお役に少しでも立てたのであれば幸いです。
早く日常が取り戻されることを、そしてみなさまが安心して過ごせることを、心から願っています。
スクールカウンセラー 佐々汐里
―参考―
国立成育医療センター
日本心理臨床学会
日本子ども虐待防止学会__